東日本大震災復興レポート

東日本大震災から、10年が経とうとしています。

当時は本部をはじめ全国の皆様方からの義捐金や支援の数々、大変ありがとうございました。

そして被災地にボランティア活動に来られた方々にあらためて感謝申し上げます。

ここでは、平成29年と30年の岩手県大会パンフレットに掲載された、岩手県の沿岸被災地の岩手釜石道院、そして岩手高田道院の先生による「東日本大震災復興レポート」を転載・ご紹介いたします。(文章・日付等は掲載時のままですのでご了承ください)


写真:被災直後の釜石市の様子と及川工務店起重機船による海上啓開状況(泉修一先生提供)


釜石編

岩手釜石道院 道院長 泉修一

 2011年3月11日午後2時46分その地震は突然起こりました。私はたまたま仕事で盛岡にいました。大地震後すぐに釜石に戻る事にしましたが、車中のラジオから流れる大津波の情報を聞き、家族、従業員、拳士の無事を祈りながら車を走らせました。家にたどり着いたのは翌日でした。会社社屋が海のすぐ側にある為、全壊は覚悟していましたが、従業員全員が無事であってほしいという祈りは残念ながら叶いませんでした。

 仕事の関係上、災害対策室に詰めながら従業員の捜索と拳士の安否確認を行いました。震災後、すぐに岩手県内はもとより全国の少林寺拳法関係者から励ましの言葉や支援をたくさん頂きまして本当にありがとうございました。改めて感謝申し上げます。岩手釜石道院は震災後、約1年で活動を再開しましたが、多くの拳士が震災による諸事情で釜石を離れていきました。

 震災から7年が過ぎた現在、復興工事も終盤を向え、目に見えて、道路、防潮堤、漁港施設、宅地が整備されています。このように被災地では復興の取組が進む一方で人口減少や復興需要の縮小に伴う地域経済への影響も懸念されるところであります。残念ながら震災記憶の風化が危惧されております。我々は大震災で得られた数々の教訓が風化しないよう、次世代に伝承する役割をもっております。インフラの復旧は数年で完了しますが、心の復興はいまだ先が見えない状態です。

 人として、地域に根ざして行きたいと思います。元気ある地域づくりのためにも、岩手釜石道院は少林寺拳法を通じてみんなの拠り所となるよう、今出来る事を進めていきます。


釜石編

岩手釜石道院 川崎義晴

 今日までの震災復興に関する皆様からのご支援、大変ありがたく思っております。

 現在釜石市内では、仮設住宅の解体と復興住宅への転居、浸水地域への個人住宅建設も進みつつあります。しかしいまだ震災に伴う空き地が目立つというのが現状です。

 このような状況ですが、来年2019年に日本で行われるラグビーワールドカップ(以下RWC)のうち2試合(9/25、10/13)が釜石市で執り行われることになっており、その準備と会場整備が急ピッチで進められています。

震災前、ラグビーチームのスタッフとして働いていた私は、RWC釜石開催の可能性について仲間と話したことがあったのですが、「釜石にはラグビーの歴史はあるが、会場、交通インフラ、宿泊場所、スタッフ、何もかも足りない、開催なんて夢のまた夢。」それがその時の結論でした。

 しかし震災後、まだ本当にこの先がわからなかった時期に、「被災した街だからこそできることがあるのではないか?RWCの会場を誘致することで復興を加速し希望を持つことが、今こそ必要なのではないか?」という声が聞こえ始めました。そのような前向きな意思が様々な人達の行動で形を持ち、ついにここまで来たと感じています。

 あの日話した仲間は、今もRWC成功のため働いています。私はラグビーに仕事からは離れましたが、当日は会場のどこかでボランティアをして、少しでも皆様からの支援の恩返しをできたらと考えています。

 恐らくは一生に1回のRWC釜石開催です。チケットの一般販売はまだこれから(ネット販売での抽選)興味のある方はぜひ、足を運んでみてください。

 


陸前高田編

岩手高田道院 道院長 五日市周三

 2011年3月11日、岩手県沿岸は大津波で未曾有の被害を受けました。私は職場で、津波に飲み込まれる陸前高田のライブ映像を呆然と見ていました。拳士や家族の皆さんがお亡くなりになり、多くが職場を失いました。現地で妻が発した言葉「終わったねえ!」の言葉に涙があふれました。被災後、神奈川県連盟の先生方によるラーメンの炊き出しや、今も継続される埼玉入間道院の畠山先生のよる復旧支援など、数々のソフト支援がありました。また、地盤の嵩上げや防潮堤の整備など、ハード整備が進められていますが、生活の場である市街地の復興はいましばらく時間を要します。発災から6年6か月。すでに記憶の風化が見られます。以下の文章は、震災時の地元拳士のコメントです。

 『3月11日、大津波はあたりまえの日常を簡単に壊してしまった。未来への絶望を感じた。しかし、全国から少林寺拳法のみなさんが駆け付け、支援を続けてくださり、再び生きる希望を持ちました。被災地は今、復興に向かっています。どうか、私達をずっと応援して下さい。覚えていてくれるだけで結構です。被災地を忘れないでいてください。』

 いまだに1万人以上の方々が応急仮設住宅で不自由な生活を余儀なくされています。拳士の皆さん、関係者の皆さんには、そのことを頭の片隅にでも留めていただきたいと思います。開祖は、「何かあったら、信じるところにしたがって行動すること」を教えられました。行動力が少林寺拳法の「力」であり、「愛」なのだと思います。「人、人、人!すべては人の質にある。」すべての行動は人が行い、人によって組織も動き、結果が生まれます。多くの皆様の変わらぬご支援をお願いします。